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「ビオサケ」って何?オーガニック日本酒を飲んでみた!有機JAS認証3銘柄を紹介

「ビオサケ」をご存知ですか?

皆さんは「ビオサケ」という言葉を聞いたことがありますか?
ビオサケとは、“日本のオーガニックを応援する団体” が提唱する、新しい日本酒のカテゴリーです。
簡単に言うと、有機JAS認証を取得した日本酒、または可能な限り農薬や化学肥料を使わず、自然の力を生かして造られた日本酒のことを指します。

一般的に「オーガニック」と同義で使われる「ビオ」という言葉から、日本の食文化と農業を次の世代へつなぐ取り組みへの想いを込め、「ビオサケ」と命名されたそうです。

有機JAS認証とは?

有機JAS認証は、日本の法律で定められたオーガニックの基準です。厳しい審査や検査を経て認証を受けた食品だけが、「有機」や「オーガニック」と名乗ることができます。

日本では2000年に制度が始まり、2022年からは酒類も対象になりました。つまり、ようやく日本酒にも「オーガニック認証」が付けられるようになったのです。

海外と日本、オーガニックの違い

日本と海外では、オーガニックのルールに少し違いがあります。
例えば、日本やアメリカでは「天然由来の農薬」は条件付きで認められていますが、どの農薬がOKかは国によって異なります。また、ヨーロッパ(EU)では、動物福祉や環境保護に関する基準がより厳しく定められています。

そんな中で、国同士の貿易をスムーズにするための仕組みが「同等性制度」。
他国の認証食品を再検査せずに輸入できる仕組みで、たとえばアメリカの「USDA Organic」やEUのオーガニック認証がJAS基準と“同等”と認められれば、追加認証なしで日本でも販売できるようになります。

なお、2025年10月1日からは、日本酒を含むすべてのアルコール飲料が同等性の対象となりました。これにより認証コストや手間を削減でき、海外でもオーガニック日本酒が広まりやすくなると期待されています。

農林水産省は2030年までに有機農地を拡大する目標を掲げており、ビオサケの動きは、まさに時代の流れに寄り添った挑戦です。

参考資料:農林水産省 有機食品の検査認証制度

ビオサケが生まれた背景

「ビオサケ」とは、オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)が定義した、日本酒の新しい呼び方です。OVJはオーガニック市場拡大を目指し、イベント企画やメディア製作等を行う団体として、「お酒の世界でもオーガニックの価値を知ってもらいたい」という思いから生まれました。

ビオサケを造るには、まず日本酒の原料となるお米の栽培について考える必要があります。原料となるお米の栽培から見直し、有機農業の推進や地球環境への配慮を重視して造られます。環境が良くなれば、持続可能な社会につながり、消費者の未来につながります。

こうした循環を生み出す「オーガニックを大切にする蔵」「ビオサケ」が、日本の食文化を担い、オーガニックの普及推進の原動力になる重要な存在とOVJは考えています。

ビオサケは現在、全国各地の酒蔵で生産され、注目を集めています。

<主なビオサケを造る酒蔵リスト>
株式会社飛良泉本舗、阿櫻酒造株式会社、株式会社一ノ蔵、株式会社小嶋総本店、有限会社仁井田本家、月の井酒造店、株式会社寺田本家、木戸泉酒造株式会社、晴雲酒造株式会社、菊水酒造株式会社、加賀の井酒造株式会社、株式会社福光屋、株式会社農口尚彦研究所、合資会社宮島酒店、株式会社柳沢林業、谷櫻酒造有限会社、太冠酒造株式会社、富士高砂酒造株式会社、千代菊株式会社、澤田酒造株式会社、杉浦味淋株式会社、関谷醸造株式会社、細川酒造株式会社、玉乃光酒造株式会社、株式会社神戸酒心館、山名酒造株式会社、大関株式会社、丸本酒造株式会社、菊池酒造株式会社、千代むすび酒造株式会社、桜うづまき酒造株式会社
※リストはOVJによるアンケート(2024年12月時点)に因るものです。最新のリストはOVJの公式ページにてご確認ください。

「オーガニックライフスタイルEXPO2025」でビオサケを体験!

東京都立産業貿易センターで開催された「オーガニックライフスタイルEXPO2025」に足を運び、実際にビオサケを味わってみました。

「オーガニックライフスタイルEXPO」は、オーガニックをはじめ、サステナブル・フェアトレード等のコンセプトを持った食品や飲料、化粧品などのさまざまな企業が出店し、消費者が試したり、購入できる、体感型のイベントです。

今回は、「有機JAS認証」を受けている3つの蔵のビオサケを試飲しました。

①オリジナルビオサケ「つなぐ」(福島県・仁井田本家 × OVJ)

ビオサケを象徴する1本。2022年に酒類の有機JAS認証制度が開始されたことをきっかけに、2年の年月をかけ、2024年に完成しました。オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)が有機栽培の酒米を育て、自然栽培を大切にしている酒蔵「仁井田本家」で醸されました。

「水酛(みずもと)」という方法で酒造りを行いました。「水酛(みずもと)」とは、自然の乳酸菌の力で発酵を進める、伝統的で自然な製法のひとつです。

名前には、米づくりと酒造り、そして飲む人を「つなぐ」存在になりたいという思いが込められています。造り手の想いがこもった、自然あふれるお酒です。

口に含むと、ナチュラルな酸がやさしく広がります。穏やかな味わいで余韻も長くやさしく、そっと寄り添うような口当たり。漬物や旬の野菜など、自然の味わいとのペアリングを楽しみたい1本でした。

②「福寿 未来への一滴 コシヒカリ」(兵庫県・神戸酒心館)

兵庫県神戸市灘の老舗酒蔵・神戸酒心館の有機JAS認定酒。「福寿」はすべて兵庫県産のお米が使用され、「未来への一滴」は兵庫県産の有機JAS認証米コシヒカリ100%で醸されています。

神戸酒心館は、世界初のカーボンゼロの日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」でも知られ、お米だけでなく、環境負荷を抑えたサステナブルな酒造りが特徴です。

同シリーズの 「未来への一滴 山田錦」は、フランス・パリを拠点に開催される日本酒のコンクール「Kura Master(蔵マスター)2025」の純米酒部門で金賞を受賞しています。純米酒部門で有機JAS認証として初の快挙です。有機JASのお酒が金賞を受賞したのは、はじめてのことだそうです。

お酒に鼻を近づけると、お米のやさしい香りがそっと届きました。雑味がなくなめらかで、口内にスルッと入っていきます。食中酒として最適な、日常的に飲みたくなる1本です。

③「美酒爛漫 Organic sake 純米吟醸酒」(秋田県・秋田銘醸)

秋田県湯沢市の秋田銘醸による有機JAS認証酒。秋田産有機米あきたこまち100%で醸されています。

「美酒爛漫」は、「人、土地、未来から、愛されつづける酒を。」をアイデンティティに掲げています。秋田県の風土が織りなす素材の魅力を存分に生かしながら、自らの手で酒米を栽培しています。また、醸造の工程で生じた副産物の再利用など、地球にやさしい酒造りが特徴です。

ラベルの桜の花びらも印象的で、ギフトにもぴったり。

香り華やかな秋田雪国酵母(UT-1)を使用。青リンゴのようなフルーティーで華やかな香りが立ち、アルコール度数も13%ほどと低めなこともあり、軽やかで飲みやすい仕上がりです。食中酒としてさまざまな料理に寄り添う味わいでした。

造り手の想いと、広がるビオサケの未来

どのお酒も、造り手の情熱と自然への敬意が感じられました。自然派のビオサケの特徴として、味わいもナチュラルなものが多い印象でした。

会場で酒蔵の方から直接お話を聞くことができ、「どんな想いで造っているのか」「どんなシーンに飲んでほしいか」など、一つひとつの言葉に“人と自然をつなぐ”ストーリーが詰まっていました。

これから「ビオサケ」がより身近に感じられることで、オーガニック日本酒の魅力が広く伝わることを願います。

この記事は私が取材しました。

たかぎ あゆ

ライター兼酒販店での販売スタッフをしています。もともと日本酒が好きでしたが、販売員として日々お客様や造り手と接するうちに、その味わいの奥深さや長い歴史、そして造り手の想いにますます魅了されました。さまざまな角度からあふれ出る日本酒の魅力を、自分なりのことばで丁寧にお伝えしていきたいと思います。

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