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【お屠蘇とは?】歴史、作法、自宅での作り方、みりんの選び方を知ろう!

お屠蘇とは、無病長寿を願い、古来より日本で正月の祝い酒として飲まれて来た特別なお酒です。その中身は通常の日本酒と異なり、その由来や作法、飲み方をよく知らない方も多いでしょう。今回は、お屠蘇の語源、歴史、作法を詳しく解説、自宅で作る方法や、ネオお屠蘇情報をご紹介します。

お屠蘇とは?

邪気を払い、一年の無病長寿を祈りながら、正月に飲む特別なお酒です。

語源は「屠」は疾病邪気を屠り、「蘇」は心身を蘇生する意味など、諸説ありますが、悪い物を葬り去り、良い物を招き入れると言う意味が込められています。

お屠蘇の歴史

およそ1700年前、もとは中国の三国時代の名医・華佗が、災難厄除けのために生薬を調合してお酒に浸して飲んだのが始まりとされています。正式には「屠蘇延命散」と言います。

日本には平安時代初期に中国の博士である蘇明が使者として朝廷を訪れた際、「屠蘇散(とそさん)」を嵯峨天皇に献上したのが始まりです。天皇が屠蘇散をお酒に浸して飲んだことから、宮中の正月行事の一つとしてお屠蘇を飲む慣習が定着しました。

江戸時代になる頃には、次第に一般庶民の正月行事として定着していきました。江戸時代の中期になると、お酒の苦手な人や女性が楽しむ甘いお酒としてみりんが人々に受け入れられるようになり、屠蘇散をみりんに浸して飲むようになりました。

また、その土地ならではの特殊なお酒を使う事例も多く、熊本県では赤酒、鹿児島県では黒酒でお屠蘇をつくります。

お屠蘇の作法

お屠蘇を飲む際には独自の作法が存在します。

飲む前に、元日の朝汲んだ、年明け最初の水「若水」で手を清めます。

次に神棚や仏壇を拝みます。家族が揃い、新年の挨拶をした後、全員で東の方角を向きます。お屠蘇を注ぎ、年少者から年長者へと順番に飲みます。厄年の人は最後に飲むのがしきたりです。

屠蘇器という名のお屠蘇専用の器が存在し、高貴な色である朱塗りの屠蘇台(とそだい)、盃台(さかずきだい)、三段重ねにした盃(さかずき)、銚子(ちょうし)、銚子飾り(ちょうしかざり)から成ります。家庭に屠蘇器がない場合、お正月にふさわしい酒器での代用でも構いません。

この三段重ねの盃で1杯ずつ3回に分けて飲むのが正式な作法ですが、屠蘇器がなければ1つの盃に3回に分けて注ぎ、それを3回に分けて飲み干せば良いとされています。飲むときには、無病息災や長寿を願いながら「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱えるのがお屠蘇の正式な飲み方です。

飲むタイミング

お屠蘇を飲むタイミングは元旦の午前中、家族がそろって新年の挨拶をしたあと、雑煮やおせち料理を食べる前が正しいとされています。
また、正月の三が日に来客があった場合にもお屠蘇をすすめて新年の挨拶を交わすことが礼儀とされています。

自宅でのお屠蘇の作り方

お屠蘇に必要な材料は屠蘇散(とそさん)と本みりん(もしくは日本酒)です。

紙に包まれたティーパックの屠蘇散1袋を、2合の本みりんの中に7~8時間漬けます。量を多く作る時は浸漬時間を長くして、漬け込みすぎると濁りが出るので、様子を見ながら時間を調節したり、沈殿物が生じた際には適宜取り出してください。「蜜柑皮」(みかんピール)、「肉桂」(シナモン)、「丁子」(クローブ)など10種類のハーブの成分が程良く溶け出したら、袋を引き上げて出来上がりです。とろりとした上品な甘味とハーブエキスをお楽しみいただけます。

屠蘇散

お酒に浸す屠蘇散は、5~10種類の生薬、体に良い作用を持つものが調合されています。
使用される材料のなかでも、一般的なものはこちらです。

甘草(かんぞう)        鎮痛・鎮咳去痰
紅花(こうか)        浄血・通経
桔梗(ききょう)        去痰
浜防風(はまぼうふう)        発汗・解熱
陳皮(ちんぴ)        健胄
茴香(ういきょう)        健胃・去痰
肉桂(にっけい)        発汗・解熱
山査子(さんざし)        健胃・消化
山椒(さんしょ)        利尿
丁字(ちょうじ)        健胃・食欲増進

本みりん

おいしいお屠蘇を作るには、甘くて口当たりの良い伝統製法の本みりんが適しており、古来より用いられてきました。

みりんには本みりん、みりん風調味料、みりんタイプ調味料の3種類があります。みりん風調味料はアルコールがほとんど入っておらず、みりんタイプ調味料は塩分が含まれています。

アルコール分を含む「本みりん」にも2種類があります。一般的に多く流通している本みりんは、醸造アルコールや糖類(水あめ)などを使ったタイプ。2~3ヵ月の醸造期間を経て、米の量に対して約4~5倍の量のみりんを造ることができます。

古来からの製法で作られているのが「三河みりん」。原材料は、国産のもち米・米こうじ・本格焼酎(米)だけで、1年以上の醸造期間をかけて、米の量に対して、同量のみりんを造ります。とろりとしてコクがあり、香りも甘みも米のエッセンスそのものです。

「三州三河みりん」を提供する角谷文治郎商店は、みりんの本場三河で「米一升・みりん一升」の伝統的な製法を受け継ぎ、もち米のおいしさを醸造という技のみで引き出した本格みりんを造り続けています。

「愛櫻」を提供する杉浦味醂株式会社は、創業以来の古式三河仕込(地元愛知県産のもち米とあいちのかおりで造る米麹、そして一番の特徴である本格焼酎のみで造り上げる)を継承する蔵元です。

「九重櫻」を提供する九重味淋株式会社は、創業240余年。三河みりんの元祖として、創業以来培った蔵人の技術にさらなる磨きをかけ、品質本位の本みりんを今も造り続けています。

「一子相傳」を提供する小笠原味淋醸造は、「みねたから」「峯寶(糖類添加NON-GMO)」3種類のみりんを製造しています。

ネオお屠蘇

お屠蘇の新しい形「ネオお屠蘇」をご提案します。

香り立つ微発酵茶、貴醸酒をミックスして温めたものに、「スパイスの女王」と称される爽やかな香りのカルダモンシードを加えたモダンタイプのお屠蘇です。

軽い甘口のお酒に、爽やかなスパイスとお茶の香りがミックスした気持ち良い味わいです。

國酒の魅力に直接触れて知ることができる日本の酒情報館では、「みりんベースのオーセンティックなお屠蘇(常温)」と「颯茶と貴醸酒をベースにカルダモンを加えたネオお屠蘇(燗)」をご用意し、2024年1月5日(金)より1月31日(水)まで期間限定で有料試飲(いずれも1杯300円<税込>)提供しています。

お屠蘇ならではの作法があるものの、地域や家庭によって違いがあり、絶対的なルールはありません。家庭でも手軽に作れますので、一年の始まりにお屠蘇を飲んで、無病息災を祈願して、三が日の来客へ振舞ってみてはいかがでしょうか。

この記事は私が取材しました。

おいしいSAKE 編集部

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