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【現地取材】「混祭2026」が挑む、100年先の「日本酒のある風景」

おいしい日本酒と文化を世界に広めるcamo株式会社と、「ニュウマン高輪」を運営する株式会社ルミネがタッグを組んで仕掛ける『混祭2026』。全国から100蔵を超える酒蔵や蒸留所が日替わりで集結するこのビッグイベントは、日本酒業界の未来を見据えた壮大な実験の場でもある。

開幕を翌日に控えた2026年6月9日(火)、東京・ニュウマン高輪 NORTH LUFTBAUM 28F「LOOPS」にて、華やかな「混祭2026」オープニングパーティが開催された。イベントに向けた想いを、主催者であるcamo株式会社代表のカワナアキ氏、ルミネの佐藤氏、そして参加蔵元を代表して会津酒造の渡部景大氏に、イベントへの想いと日本酒市場の構造改革に至るまで、熱い本音を語ってもらった。

なぜ今、高輪で『混祭』なのか?

――2025年に続き、今年で2回目となる「混祭2026」ですが、まずはこの「混祭(こんさい)」という印象的なタイトルに込められた意図からお聞かせください。

カワナアキ氏(以下、カワナ氏): 理由は大きく2つあります。1つは「街の混ざり合い」です。TAKANAWA GATEWAY CITYのような、100年先を見据えた新しい巨大な街ができるとき、どうしても元々あった地域やコミュニティとの間で「分断」が起きやすい。しかし、街が持続的に発展していくためには、人が交流し、血液のように循環していく必要があります。年に1回、誰もがフラットに参加できる「祭り」があることで、新旧の街と人がしっかりとユナイトしていく。その血液の循環を作りたい、というのが1つ目の意図です。

もう1つは「ジャンルと人の混ざり合い」です。これまでの専門イベントって、「日本酒」「ワイン」という風に、縦割りになりがちでした。でも、造り手も飲み手も、本当はもっと地続きのはず。今回は日本酒だけでなく、あえてクラフトジンや焼酎、クラフトサケ(その他醸造酒)といった国内の多彩な蒸留所・つくり手にもお声がけをしました。異なるジャンルのお酒を交えることで、造り手同士が交流し、普段は日本酒に馴染みのない他ジャンルのファン(飲み手)が自然と混ざり合う。その結果として、市場全体のパイを広げていきたいと考えています。

――ニュウマン高輪を運営するルミネの視点からは、今回の「混祭」をどのように位置づけていらっしゃいますか。

佐藤氏(以下、佐藤): 後継者不足や市場縮小といった厳しい現実に直面している、日本の素晴らしい生産者や職人の皆様を支えることは、私たちが目指す「100年先の心豊かな暮らしを作る高輪の街づくり」というルミネの思想そのものと深く合致しています。

ただ、背景にある業界の課題感を難しく伝えるのではなく、まずは「イベントとして楽しい!」というワクワクする原体験を提供したい。そこから、お客様が自然と日本の産業や伝統文化に興味を持つきっかけになれば嬉しいですね。

2025年の第1回は「街開きイベント」としての側面が強かったのですが、2026年となる今年は「この土地らしさ」「ニュウマン高輪らしさ」をより明確に打ち出し、方向性をさらに強固なものにしました。カウンターでしっぽりと飲むようなこれまでの固定概念を崩し、これまで日本酒に触れてこなかったライト層が、気軽に、そしてスタイリッシュに楽しめる空間とメッセージ性を何よりも重視しています。

「美味しい」の先にある多様化の時代

――蔵元の立場から、現在の日本酒業界の状況、そして今回の「混祭」という場に期待することをお聞かせください。

渡部景大氏(以下、渡部氏): かつての日本酒業界は「とにかく美味しいものを作ろう」と、みんなが同じ方向性の美味しさを目指して酒造りをしてきました。そして今、その技術レベルには多くの蔵が到達したと感じています。だからこそ現在は、それぞれが独自の個性を打ち出す「多様化の時代」、つまり新たなスタートラインに入ったと言えます。

確かに国内の消費量は減っていますが、ネガティブに捉える必要はありません。日本の文化であり、誇りである「国酒」としての魅力を、ここから世界に向けてアピールしていくチャンスはまだまだ残されていると考えています。

――今回の「混祭」では、プロのバーテンダーが日本酒を使ったカクテルを提供するなど、かなりカジュアルでエッジの効いた提案もされています。造り手として「完成された日本酒を混ぜられること」への抵抗はありませんでしたか?

渡部氏:もちろん、蔵元としてはそのままの状態で完成させて出しているプライドはありますが、それはそれとして、飲む場所の温度や、暑さ・寒さ、その時の気分に合わせて自由に楽しんでもらうのが一番です。むしろ「こんな美味しい飲み方を見つけたよ!」と、新しい発見を作り手に教えてほしいくらい。造り手側の頭が凝り固まっていてはいけないな、と。私は「自由に、やりたいように飲んでほしい」と大賛成しています。

カワナ氏: 特に日本酒は醸造酒なので、蒸留酒と違って味の要素が多く、カクテルにするのが非常に難しいんです。しかし今回、プロのバーテンダーの皆さんと相談を重ねる中で、ただ混ぜるだけでなく、「味わいとしてこのお酒である必然性があるか」「カクテルのストーリーとして美しいか」を徹底的に突き詰めていただきました。自信を持って新しい提案だと言えるカクテルに仕上がっていますので、日本酒初心者の方の入り口としても、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

『ゼロ』のお客様を『イチ』にする役割」で市場に貢献

――カワナさんはかねてより、「一人でも多くの消費者の生活動線に『日本酒のある風景』を創ることが不可欠」と発信されています。3月にオープンした常設店「sakejump takanawa」と、今回の「混祭」というビッグイベントの連動について教えてください。

カワナ氏: 今の日本酒市場における最大の課題は、特に質の高いお酒の流通が「アクセスが悪く、目的性の高い専門店」に偏りすぎていることです。日本酒が好きな人はそこへ通いますが、これまで馴染みのなかった層にとっては、生活動線からあまりに乖離している。結果として、新しい飲み手が増えていません。

3月にMIMUREにオープンした「sakejump takanawa」は、1日に数万人もの感度の高い人々が行き交う、まさに生活動線の中心にあります。今回の「混祭」という非日常のビッグイベントで日本酒の楽しさに触れた方が、日常に戻ったときに「sakejump」にふらっと立ち寄る。そこでさらに興味を持てば、今度はもっと知識や品揃えが豊富な、街の「専門店」に足を運ぶようになる。この循環を作ることが、私たちの狙いです。

――既存の専門店や、伝統的な流通構造との役割分担をどう捉えていますか。

カワナ氏: 誤解してほしくないのは、私はこれまでの専門店が築いてきた功績や文化を100%リスペクトしています。ただ、市場全体がカニバリを起こしてジリ貧になっている現状に対して、「環境のせい」にしたり、自分たちは何も努力を変えないまま、新しいプレイヤーの動きに文句を言うような態度に対しては、「それは違うだろう」とハッキリ言いたい。

「混祭」や「sakejump」がやっているのは、日本酒を知らない・飲まない『ゼロ』のお客様を『イチ』にする役割です。この顧客獲得の領域においては、今や既存の専門店よりも商業施設やイベントの方が圧倒的に貢献できている自負があります。

だからこそ、私たちはここで責任を持って新しい入り口を作ります。そこから先、日本酒をさらに深く愛してくれるようになった顧客を、自分たちの店へ引き込み、しっかりと捕まえられるかどうかは、専門店側の努力と実力にかかっています。「俺たちはここで死ぬ気でゼロをイチにしているんだから、お前たち専門店も自分たちの役割を死ぬ気で頑張れよ」と。お互いがプロとしてそれぞれの領域で全力を尽くさなければ、このジリ貧の構造は変えられません。

「混祭2026」は未来へ向けた大きな一歩

――これほど大規模なイベントを、日替わりで100蔵以上もハンドリングするのは、運営面でも相当なご苦労があるのではないでしょうか。

カワナ氏: 本当にその通りで、イベントのタイムライン管理や蔵元さんとの調整は、遅くとも半年前、人気のある蔵元さんだと1〜2年前から予定を押さえていかなければ成り立ちません。直前のオファーではもうスケジュールは埋まってしまっています。今回も約120〜150蔵に声をかけ、最終的に100蔵超の素晴らしいラインナップが実現しました。ありがたいことに、最近では蔵元側から「うちも出られませんか」と逆オファーをいただくことも増えています。

なぜそれだけの信頼をいただけているかというと、見せ方はカジュアルでおしゃれであっても、お酒の品質管理、冷蔵設備の徹底、蔵元へのフォローといった「現場のインフラ」をきっちりプロフェッショナルに作り込んでいるからです。そこがブレたら、蔵元の大切なお酒を預かる資格はありませんから。

――最後に、今後の日本酒市場の未来へ向けて、メッセージをお願いします。

渡部氏: 蔵元というのは、お酒の製造シーズンに入るとどうしても24時間体制で酒造りに没頭せざるを得ず、物理的に自分たちで直接、消費者の皆様に魅力を「伝え続ける」ことが難しくなります。だからこそ、カワナさんたちのように、信頼できる場所で、信頼できるプロが、お酒の背景にあるストーリーを実直に「繋いでくれる」存在は本当に心強いです。

また、こうした場は、参加する飲食店の皆様にとっても「新しい日本酒の可能性を主体的に学ぶ場」として大きな刺激になっています。私たち造り手も、老舗から若手まで一丸となって、世界に向けて誇りを持った酒造りを頑張っていきます。

カワナ氏: 私たちが目指すのは、100年先を見据えた「日本酒のある風景」です。多様な造り手による多様なお酒が、当たり前のように人々の生活のなかに溶け込んでいる世界。そのためには、古いしきたりを守るだけでなく、流通構造を進化させ、新しいポジショニングのプレイヤーが登場しなければなりません。

「混祭2026」は、その未来へ向けた大きな一歩です。日本酒が好きな方も、これまであまり飲んでこなかった方も、ぜひこの高輪の地で、混ざり合う熱量と新しいおさけの魅力を体感してください。会場で皆様をお待ちしております。

「混祭2026」会場(2026年6月10日撮影)

インタビュイー プロフィール

■ 主催者 / カワナ アキ(Aki Kawana)氏
camo株式会社 代表取締役 / 一般社団法人Roots of 発起人・理事

2018年創業。コンサルティング事業を基盤に、日本酒業界の発展に取り組む。これまで全国200以上の酒蔵を取材し、発信を行ってきた。日本酒イベント「若手の夜明け」を2022年に事業承継し規模を拡大。 「sakejump」ではイベントやECサイトを通じて酒蔵の価値向上を推進する。2024年から能登の酒蔵復興プロジェクトを推進、海外イベントも開催。2025年には政策提言カンファレンス、2026年には高輪に開業した実店舗「sakejump takanawa」を監修し、日本のお酒文化の発信拠点として展開している。

■ 参加蔵元 / 渡部 景大(Keitai Watanabe)氏
会津酒造株式会社 9代目当主

1987年1月26日生まれ。福島県南会津町で1688年創業、会津酒造株式会社の9代目蔵元。東京農業大学醸造科で酒造りを学び、酒販店での経験を経て蔵へ戻る。 豪雪地帯・南会津の自然環境と超軟水に魅了され、「南会津の風土を醸す」をテーマに酒造りに取り組む。代表銘柄「山の井」では、土地の空気や水、四季の美しさを日本酒で表現し、“やわらかく透明感のある味わい”を追求。伝統を守りながらも、酒質設計・ブランド改革・海外発信など新たな挑戦を続けている。近年は、地域全体での価値向上にも力を注ぎ、GI南会津取得にも携わるなど、日本酒を通じた地域文化発信にも尽力。酒造りだけでなく、「地方にしかない価値」を次世代へ繋ぐ活動を続けている。

■ 共催 / 佐藤(Sato)氏
株式会社ルミネ 混祭担当

株式会社ルミネは、JR東日本の首都圏ターミナル駅を中心に商業施設「LUMINE」/「NEWoMan」16館と海外2拠点、ファッションEC「アイルミネ」を展開。「LUMINE」は、トレンドに敏感なお客さまに向けて、等身大+のライフスタイルを豊かにする提案をおこない、「NEWoMan」は、上質で本物を求めるお客さまに、新しい時代の多様な価値観・生き方の選択肢の提案をおこなっている。2026年9月には、最大規模の施設である「ニュウマン高輪」が本格開業を迎える。

【イベント概要】

イベント名:混祭2026
開催期間:2026年6月10日(水)17:00~21:00、6月11日(木)17:00~21:00、6月12日(金)17:00~21:00
6月13日(土)12:00~20:00、6月14日(日)12:00~18:00
会場:TAKANAWA GATEWAY CITY ニュウマン高輪
主催:混祭実行委員会(camo株式会社 / 株式会社ルミネ)
共催:TAKANAWA GATEWAY CITY
公式サイト:https://sakejump.com/ja/events/2026gateway

LOOPS
ニュウマン高輪 LUFTBAUM 28F
連携期間:6月10日(水)- 6月14日(日)

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「ゼロをイチにする」というカワナアキ氏の強い覚悟と、100年先を見据えるルミネの街づくり思想が共鳴した『混祭2026』。縦割りの業界構造や、既存の流通プロセスに一石を投じ、多様化する造り手の個性を「街の日常」へと接続する本イベントは、まさに市場再生への画期的な一歩です。ライト層を本物のファンへと育てるハブとして、今後の日本酒、日本のおさけ市場の景色をどう塗り替えていくのか、これからも注目です。

インタビュアー 『おいしいSAKE』編集長 畔柳 伸

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