日本酒ビギナー向け【熱燗シリーズ①】温度を変えて味わいの変化を楽しむ!
「熱燗」と聞くと、どんなイメージがありますか?
日本酒ビギナーの抱くイメージには、「お酒の嫌な感じを熱で飛ばす」「安酒の風味を誤魔化す」など、どちらかと言うとマイナスイメージがあります。
一方で日本酒好きの方にとっては「お酒を温めることでより美味しくなる」「世界のお酒には無い、日本酒固有の飲み方」と、プラスイメージがあります。それどころか世界に誇る飲酒文化と力説される方もいらっしゃいます。
※ 「熱燗」は、通常50℃ほどの温度帯のものをよびますが、この記事では温めたお酒全般のことをよぶことにします。
この記事の目次
熱燗は温度を変えて、味わいの変化を楽しむもの!
熱燗について、ただお酒を温めて飲む飲み方という固定観念をもっていらっしゃる方は多くいるかもしれません。確かに、温度の違いは分かりやすい変化ですが、ただ温かくなっただけではありません。
温度を変えることで、常温とは違う味わいを楽しむことができます。
例えば、純米酒や特別純米酒などのお米のうま味を強く感じられるお酒は、温めることでそのうま味がより豊かに感じられる傾向にあります。また、本醸造酒や特別本醸造酒などのキレの良いお酒は、温めることによりキレの良さが増し、シャープさが際立つ傾向があります。
もちろん、一般的なイメージのように、シャープなアルコール感を丸めてくれる効果もあります。しかし、それ以上に、常温(冷や)とは異なる側面を見せてくれる飲み方という、日本酒の深い楽しみ方の一つなのです。
熱燗を楽しむ前に……
序文の※にもあるように、実は「熱燗」というのは、50℃前後に温めたもののことであり、温めたお酒を一般に呼称するものではないんです。ただ、最近は一般に「熱燗」とよばれることが多くなりました。
しかし、ここではあえて温度ごとの呼ばれ方をご紹介します。というのも、この呼ばれ方がそれぞれとても美しく、趣を感じられるためです。
いかがですか?
聞くだけでどのぐらいの温度感かも分かるのですが、その表現に「雪」や「花」、「日向」や「人肌」という言葉を選んでいるのが、とても素敵ですよね。
では、実際に飲み比べてみました!
お待たせしました! それでは、温度によって、どのような味わいの違いが出るのでしょうか。
今回も日本酒ビギナーの友人(以降、友人A)と一緒に、飲み比べてみます。
実際に飲み比べるのは、香りや味わいの違いがよく分かり、熱燗でも人気の「八海山 特別本醸造」です。1980年代の地酒ブームにおいて注目が集まった「淡麗辛口」の新潟の地酒の一角を担っていたお酒です。「幻の地酒」を全国区に広げるのに一役買った人気銘柄です。
- 原料米・精米歩合:五百万石 55%
- アルコール度:15.5度
- 日本酒度:+4.0
- 製造元:八海醸造株式会社(新潟県南魚沼市長森1051番地)
まずは、常温(約20℃)で
まずは、常温で飲んでみよう。どうやろ?
飲みやすい! 水を飲んでるみたい!
そうやね、最初の方は味が結構おとなしめだよね。
でも、だんだん味が出てきてるように思う。これがどんな味かっていうのが表現できないんだけど。
確かに! 飲み込む直前、喉の手前の方で、グッと味がするな。なんというかお米のうま味とコクみたいなのを感じる。
次は、人肌燗(約35℃)で
次は、少し温めて人肌ぐらいの温度で飲んでみよか。どうやろ?
んっ! 飲む前から香りがすごい!
醸造アルコールっていう、口当たりを軽くしたり華やかな香りを足したりするために添加したお酒の香りやね。果実とは違うけど少しコクのある甘い香りがするね。
んっ! 味もね、口に入れた瞬間にブワッと広がる! でも、すぐに味が引いてるから飲みやすいね。
ホンマやな。飲んだ瞬間、口に含んだ瞬間に、匂いにもあった香り高い味わいが膨らむね。でも、言うてくれた通り、口の中央ぐらいではもうキレててかなりシャープな味わいになるね。これがいわゆるキレってやつかな?
最後は、熱燗(約50℃)で
次は、かなり温めて飲んでみよか。
50℃くらいって聞くと、かなり熱そうだよね? 火傷しないかな……。
全然大丈夫よ。70℃ぐらいでないと火傷しないらしいよ。普段食べてるあったかい食べ物も意外と50℃とかそれ以上よ。
うん、大丈夫そうだわ。ん……? なんか飲んだ瞬間にはもうキレてる感じがする……。あんまり飲んだ感がない……。
……確かにね。人肌燗みたいな飲んだ瞬間の膨らみみたいなのは、あんまり感じられないね。その代わりキレッキレやね。
飲み比べてみて
実際に飲み比べてみたけど、どうやった?
常温のときは、味の強さのピークが口の後ろの方にあったけど、温めたら、そのピークが口に入れた瞬間ぐらいに来てた。
言ってたように、温度で味わいの違いがあるっていうのが、飲み比べることで分かった!
いいね〜! ちなみに、どの温度帯が好きやった?
私は、最初の常温が好きだったかも。温めたときみたいな味が強く広がるのは、まだ私には早かった……。でも、おでんとか温かい食事と一緒に食べたら、むしろ熱燗の方が好きかもって思った!
僕は、人肌燗が一番好みやったな。結構、味とか香りがしっかりしてる方が好きなんよね。人によって、好みの温度帯が違ってくるっていうのもいいよね。料理によって、合う温度帯も変わってくるってのも日本酒世界の深いところやな。
終わりに……
今回は、熱燗の魅力として、温度帯を変えることで常温とは異なる味わいを楽しめるという側面をご紹介しました。
もちろん、友人Aと僕で好みの温度帯が異なるように、人によって、銘柄によって好みの温度帯は変わってくると思います。自分の好みの飲み方を知る・日本酒の奥深い世界を知るために、ぜひ一度熱燗を飲んでみませんか?
次回の「熱燗②」の記事では、日本酒ビギナーでも簡単に熱燗を体験する方法と、簡単ながら意外な熱燗の飲み方を紹介します!
お楽しみに!
この記事は私が取材しました。
たてかん(おいしいSAKEサポートライター)
東京都内在住の現役大学生(執筆時21歳)。初めての日本酒に故郷の灘五郷の香りを感じ、日本酒にハマりました。若者にももっと日本酒を好きになってもらいたく、日本酒ビギナー目線でコンテンツをお届けします。