日本酒のぬる燗とは?春に試したい簡単な温め方とおすすめ銘柄

暦の上では立春を迎え、春が始まりました。
春の日本酒といえば、冷やして楽しむイメージがあるかもしれません。
しかし、3月から4月にかけてはまだ肌寒い日も多く、日本酒の楽しみ方に少し迷うこともあります。
そんな季節に、実はもうひとつの選択肢があります。具体的な銘柄も踏まえて、おすすめの日本酒の飲み方を紹介していきます。
この記事の目次
春の日本酒は冷やすだけ?ぬる燗という選択肢

春の日本酒といえば、冷やして飲むイメージを持つ方が多いかもしれません。実際に、春限定酒やうすにごり酒はフレッシュな味わいが特徴です。冷酒で飲むと、そのフレッシュさをより感じることができます。
しかし、初春は日中と夜の寒暖差が大きく、夜になると冷え込む日も少なくありません。そんな時期に選択肢としておすすめしたいのが、日本酒の「ぬる燗」という飲み方です。
ぬる燗とは、人肌より少しあたたかい程度に温めた日本酒のことを指します。ほどよく温めることで、アルコールの刺激がやわらぎ、米の甘みや旨みがやさしく広がるのが特徴です。
冷やすだけでなく、少し温度を上げるという選択肢を持つことで、春の日本酒の楽しみ方はぐっと広がります。
ぬる燗とは?何度くらいが目安?

「ぬる燗」とは人肌より少しあたたかい程度と先述しましたが、具体的な温度が気になりますよね。
ぬる燗は、40℃前後を指します。38〜42℃が適温です。手でおちょこを持ち、「ほわっとあたたかいな」と感じるくらいが目安です。特徴として、湯気はほぼ立ちません。
お燗は温度によって、さまざまな名前を持ちます。
- 日向燗:約30℃
- 人肌燗:約35℃
- ぬる燗:約40℃
- 上燗:約45℃
- 熱燗:約50℃
ぬる燗はアルコールのツンとした刺激がやわらぎ、甘み・旨みがふくらみ香りがやさしく立つ特徴を持ちます。
ほんの少し温度を上げるだけで、日本酒の表情は変わります。次の章では、自宅で簡単にできるぬる燗のやり方を説明します。
初心者でも簡単。日本酒のぬる燗の温め方

続いては、自宅でも簡単にぬる燗ができる方法を紹介します。
①湯煎でつくるぬる燗の手順
必要なもの
・マグカップ
・鍋もしくは深めのフライパン・水
手順
1.鍋にマグカップが半分ほど浸かるくらいの水を入れ、火にかけます。
2.沸騰する前(鍋の底に小さな泡が出る程度)で火を止めます。
3.マグカップを鍋に入れ、2〜3分ほど待ちます。
4.取り出して、温度を確認します。
ポイント・温度の見分け方
湯煎はゆっくり温まるため、電子レンジよりも温度が安定しやすい方法です。
・マグカップを持って心地よいあたたかさ
・触って熱いと感じる場合は上燗に近い可能性あり
・温まりすぎた場合は、少し置いて冷ますとぬる燗に戻ります
ぬる燗は“正確な温度”よりも“心地よさ”が大切です。
きっちり40℃にこだわるよりも、自分が「ちょうどいい」と感じる温度を探してみましょう。
②電子レンジでつくるぬる燗の手順
必要なもの
・日本酒(1合=180ml程度がおすすめ)
・マグカップ
・ラップ
手順
1.日本酒をマグカップに注ぎます。
2.軽くラップをかけます(完全に密閉しないようにしましょう)。
3.500Wで30〜40秒ほど温めます。
4.一度取り出して軽く混ぜ、温度を確認します。
5.足りない場合は10秒ずつ追加で温めます。
※1合(180ml)の場合の目安です。量が少ない場合は加熱時間も短くなります。
ポイント・温度の見分け方
・徳利やカップを手で持って「ほわっとあたたかい」と感じる
・湯気はほとんど立たない
・口に含んだとき、熱さよりもやわらかさを感じる
温めすぎるとアルコール感が強くなり、風味が飛んでしまうことがあります。少し物足りないかな、くらいで止めるのが失敗しないコツです。電子レンジは手軽ですが、加熱ムラが出やすい点には注意しましょう。必ず一度混ぜてから温度を確認してください。
春にぬる燗がおすすめな理由

春は過ごしやすい季節と思われがちですが、実は寒暖差が大きく、体調を崩しやすい時期でもあります。そんな季節に日本酒を飲む時は、「ぬる燗」という飲み方がおすすめです。その理由を紹介します。
① 春の寒暖差による“冷え”を防ぎやすい
3月から4月にかけては、日中は暖かくても夜は急に冷え込む日が少なくありません。冷酒はさっぱり楽しめる一方で、体を内側から冷やしてしまうこともあります。ぬる燗(40℃前後)の日本酒であれば、やさしく体を温めながら楽しめるため、春の寒暖差対策としても取り入れやすい飲み方です。
② アルコールの刺激がやわらぎ、ゆっくり飲める
日本酒をぬる燗にすると、アルコールのツンとした刺激がやわらぎ、甘みや旨みが穏やかに広がります。その結果、自然と飲むペースが落ち、少量でも満足しやすくなります。飲み過ぎを防ぎやすい点も、健康面を意識するなら大きなメリットです。
③ 自律神経が乱れやすい季節に“整える”時間をつくれる
春は環境の変化が多く、自律神経が乱れやすい季節です。ぬる燗のあたたかさは、緊張した体をゆるめるきっかけになります。温かい日本酒をゆっくり味わう時間そのものが、リラックスにつながります。
冷やすだけが春の日本酒ではありません。健康面を意識するなら、ぬる燗という選択肢を取り入れてみるのもひとつの方法です。
ぬる燗に合う日本酒銘柄をご紹介!
名前に“春”や“桜”がつく日本酒は、ラベルを眺めるだけでも季節を感じられるのが嬉しいところ。春のお酒は冷やして飲むイメージが強い印象があるかもしれません。そんな中で、ぬる燗にしてもおいしいものを選ぶと、春のやわらかい余韻と体のあたたかさが同時に訪れて、なんとも言えない豊かな時間を過ごせます。おすすめの春酒を4種類、ご紹介させていただきます。

製造:男山株式会社
(北海道旭川市永山2条7丁目1番33号)
北海道・旭川の老舗蔵が醸す、季節限定の純米酒。お米由来のやさしい甘みと爽やかな酸味が調和し、軽やかで飲みやすい味わいが特徴です。冷酒ではすっきりとした印象ですが、ぬる燗にすることで香りがふわりとひらき、甘みがより丸く、やわらかく感じられます。春の寒暖差が残る夜に、体をじんわり温めながら楽しみたい一本です。

製造:天寿酒造株式会社
(秋田県由利本荘市矢島町城内字八森下117 )
「ぎんさん」という、秋田県が開発した酒造好適米を使った一本。超軟水の水を活かしたやわらかい口当たりと爽やかな酸、そしてお米の旨みを感じられる特徴を持ちます。ぬる燗にすることで、奥行きのある旨みがさらに強調されます。

製造:大谷酒造株式会社
(鳥取県東伯郡琴浦町浦安368)
こちらの日本酒は、桜から酵母を抽出・培養した一本。ほのかに桜の風味を感じられる、優しい味わいが特徴です。低アルコールで甘みが強いため、ぬる燗にすることで角が取れて甘さが丸くなり、お米らしい甘みを感じ取ることができます。また、酸度の高い味わいのため、温めるとさらに酸が立体的に感じられます。

製造:向井酒造株式会社
(京都府与謝郡伊根町平田67)
創業260年、京都・伊根の老舗蔵である向井酒造が、生酛造りを復活させて醸す一本。6号酵母の個性を活かした、やわらかく上品な味わいが魅力です。生酛ならではの奥行きある旨みを持ちながら、クセがなく食事に寄り添う酒質。ぬる燗にすると旨みがふくらみ、より一層料理に寄り添う表情を見せます。
春にあえて”ぬる燗”という選択をして、心も身体もやさしく温まる一杯を体感してみてはいかがでしょうか。
この記事は私が取材しました。
たかぎ あゆ
ライター兼酒販店での販売スタッフをしています。もともと日本酒が好きでしたが、販売員として日々お客様や造り手と接するうちに、その味わいの奥深さや長い歴史、そして造り手の想いにますます魅了されました。さまざまな角度からあふれ出る日本酒の魅力を、自分なりのことばで丁寧にお伝えしていきたいと思います。

