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関谷醸造×MARS駒ヶ岳蒸溜所コラボ企画商品【TSUNAGU】

今回インタビュアーとしてお邪魔させていただいたのは、関谷醸造の160周年を記念しMARS駒ヶ岳蒸溜所とのコラボレーションで開発が行われた「TSUNAGU(つなぐ)」のお披露目会

会場は関谷醸造が運営する「SAKE BAR圓谷(まるたに)」。名古屋の城下を流れる堀川の西側「四間道」の一角で、 江戸時代に建てられた築150年の米蔵を改装した店舗である。

関谷醸造160周年企画

「蓬莱泉」や「空(くう)」で知られる関谷醸造の本社蔵は元治元年に創業し、2024年で160周年、吟醸工房は2004年に開かれ20周年を迎える。

お披露目会に参加された方の中には日本酒を好きになったきっかけは「空」であったという方もいらっしゃり、古くから愛されながら醸してきた蔵であることを感じる。

今回の160周年に当たり、関谷醸造は二つの企画を立ち上げた。まず、地元設楽町産の樹齢約160年の杉を使用した木桶作成の取り組み、そして今回のバーボンバレルでの樽貯蔵の取り組みである。

当企画はMARS(マルス)駒ヶ岳蒸溜所とのコラボレーション企画であり、当該蒸溜所で使用されたバーボンバレルで日本酒を熟成して商品化した後、この樽を更にMARS駒ヶ岳蒸溜所が使用しウイスキーを貯蔵熟成することでお互いの持つものを合わせて新たな味わいを創生するプロジェクトである。

当プロジェクトではMARS駒ヶ岳蒸溜所からバーボンバレル四本を借り、貯蔵年月を変えた四種類のお酒を提供する。これによって樽による風味や熟成期間のグラデーションが生まれることが期待され、味の変化を楽しむことが出来る。

バーボンバレルを用いているのはMARSからの提案であり、樽の香りやウイスキーの香りを両立させながらの表現が出来ることから選ばれた。熟成させたお酒は杜氏がかつて初めて作った生酛のお酒を貯蔵熟成させていたものである。

販売形式としては専用フォームから申し込む抽選販売形式であり、2024年6月から順に二か月ごとの販売を予定し、現在申し込み受付中である。(詳しくはこちら

多くの人に楽しんでもらうために500mlでの販売となり、販売数は各ボリューム300本、価格は20,000円からとなる。瓶は少しウイスキーのテイストを感じるデザインとなっており、箱も木樽を思わせる構造や肌をしている。

SAKE BAR圓谷での蓬莱泉ペアリング

SAKE BAR圓谷のお披露目会では、六か月間の貯蔵を行った「TSUNAGU」を始めとした「蓬莱泉」のラインナップと、それに合わせた料理のペアリングを楽しむことが出来た。

先付(一品目

蛸と絹姫サーモンのカルパッチョ燻製オイル掛け+TSUNAGU六か月貯蔵

TSUNAGUからはウイスキーを思わせる木の甘い香りが漂い、深みを強く感じた。燻製の香りとTSUNAGUの木の香りが溶け合い非常によく合う。オイルの風味や塩気が魚介の後味を包み、TSUNAGUが持つ心地よい香りと共に余韻を残して溶け去る感覚を覚えた。冷えているときはウイスキーの色を強く感じるが、人肌ほどに温めると日本酒の色を強く感じる。猪口では日本酒、グラスでは洋酒の色を感じさせるとも聞き、料理やデザートなど様々なシーンに寄り添ってくれる面白いお酒だ。

造里(二品目

お造り三種盛+一念不動 純米大吟醸&夏生酒

日本酒が持つふくらみや柔らかな甘みが魚の脂を和らげ、脂がのっているのにくどさを感じさせず脂の甘みを強く印象付ける。また、それがお酒の甘みも引き立てる。特に夏生酒のすっきりとしながら少しパンチがある爽快感が脂の甘みとよく合い、涼やかな気持ちになる飲酒体験だった。

温物(三品目

鱸の鬼卸煮+低アルコール 燗酒

燗酒の温もりと奥から感じる辛さが、鬼卸煮の出汁の優しさと合わさり心地よい。鬼卸煮の持つほっとするような優しさをぬるめの燗酒が引き立てていた。

焼物(四品目

愛知鴨の西京焼き+シェリー樽で熟成させた粕取り焼酎

西京焼きの甘みや粕の香りが粕取り焼酎の香りと合わさってふんわりと口に広がる。焼酎の元になっているのは米焼酎を使った本醸造だとお聞きし、全てが米で出来ていると言われて面白く感じた。実を言うと焼酎があまり得意ではなかったのだが、これは美味しく飲むことが出来た。焼酎が苦手だという人でも飲むことが出来る焼酎とそのペアリングだった。焼酎のすっきりとした感覚が鴨の脂っけや西京焼き独特の後味をさっぱりとさせてくれる。

龍盛五品目

蛤のしぐれ煮、海老とザワークラウトの春巻き、烏賊墨真丈のオランダ煮、万願寺とじゃこの土佐焼、蕎麦とモロヘイヤのお浸し、稚鮎の唐揚げ+空・和生酒&火入れ

稚鮎の苦みと空の甘みがよく合う。空が持つやわらかな甘みが、稚鮎のふっくらとした身から香る香ばしさや塩気を引き立て優しい気持ちになる味だった。和の生酒と火入れはどちらが好きかというお話になり、私は火入れの方が美味しいと感じた。生酒は若干のパンチや酸味があるため火入れの方が飲みやすいと感じたのだが、女性は生の方が飲みやすい人が多いのだと聞いた。読者の方にもどちらが好きか飲み比べて見てほしい。

六品目

あいちひめとヤングコーンのご飯味噌汁+日本酒を熟成させた樽で熟成させたウイスキー

ご飯の香りやヤングコーンの甘みがお酒と合わさることで、ひんやりとした清涼感の中にぬくもりのある安らぎを感じた。ウイスキーは、後味に日本酒を感じる、とMARSの方が仰っていたが自分たちには分からず、まだまだ精進が足りないと感じた。一方で、ウイスキーを飲めない自分がロックでするすると飲めてしまったため、実感できないだけで味わいに何らかの飲みやすさや変化があったのかもしれない。

終わりに……

蒸留酒があまり得意ではない自分だったが、ウイスキーの持つ甘い木の香りが日本酒と合わさることでこんなに違う顔を見せてくれるものなのかと強く感じた。

温度や酒器による味わいの広がりは関谷醸造さんがおっしゃる通り「しまい込まず様々なシーンに合わせる」ことを強く考えさせる面白味がある。自分のように「蒸留酒は苦手だがウイスキーが持つぬくもりを帯びた甘い香りは好き」という人には是非飲んでみてほしいお酒だ。

今後、熟成段階が進んでいくことでどのように味わいが変化していくのかが楽しみ。価格は決して安くないが、かかった年月や手間、こだわりと味を考えれば決して高い買い物ではないだろう。東海地方の日本酒飲みを魅了し続けてきた関谷醸造のお酒、そしてその新たな試みを是非味わってほしい。

この記事は私が取材しました。

松山直樹(おいしいSAKEサポートライター)

岐阜県在住の現役大学院生(執筆時23歳)。キャンパスの日本酒サークルで日本酒の勉強に勤しむ。日本酒ビギナー目線で気になるコンテンツをお届けします。

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